◆ファッション雑貨の街・徒かちくら蔵

台東区南部は古くから装飾品やファッション雑貨に関わるモノづくり産業が盛んだ。御徒町周辺にはジュエリー、小島周辺には財布や袋物、鳥越には帽子。浅草橋にはアクセサリー関連の製造・卸が集まる。それらのモノづくりをサポートする材料や資材、道具などを扱う問屋や小売店も集積している。

◆モノマチ立ち上げのきっかけ

モノマチがイベントとして立ち上がるきっかけとなったのは、徒蔵エリアの中心に位置する２００４年にオープンした創業支援施設台東デザイナーズビレッジ（通称デザビレ）の施設公開。通常は非公開だが、年一回、入居者である若手クリエイターと地元の人々との直接交流の場として実施してきた。デザビレは05年につくばエクスプレス開業に合わせたイベントを実施するが、参加者も集客も不十分で失敗。その後、毎年卒業ブランドを輩出し、その半数がエリア内にアトリエやショップを構え始めた。それはこの地域が、材料や道具などを調達するのに便利だったこと、地元の企業や職人とのつながりができていたことが理由だ。２０１０年このエリアを「徒かちくら蔵」と名付け、雑誌『東京ウォーカー』が、デザビレ施設公開と卒業生ショップ巡りを紹介して、翌年開催のモノマチのトライアル版が実施された。

◆第一回モノマチの成果と街の変化

第一回モノマチは２０１１年５月デザビレ村長の呼びかけで集まった地元企業やデザビレ卒業生ショップなどの16社からスタート。施設公開と佐竹商店街で開催した「モノづくり市（現・クリエイターズマーケット）」を２本柱とし、集客に力を注ぐことで、商店街は30年ぶりともいわれるにぎわいを見せ、地元企業も大いに成果を得た。地域のリーダー的存在である木本誠一さん（木本硝子代表取締役社長）は、「初回は本当にお客さんが来てくれるのか不安でした。しかしフタを開けてみれば来場者１万人の盛況ぶり。自分たちも驚きました」と振り返る。

それまで小売りを行っていなかったメーカーや問屋が、モノマチをきっかけとして消費者に直接商品を販売するショプやショールームをオープンさせるという動きが見られたのも成果のひとつだ。また、回を重ねるごとに、参加企業やボランティアスタッフが増加。地域内でも交流が始まり、イベント時にコラボレーションして商品を開発したり、お客様を楽しませるしかけを自発的に考えたりと、いいコミュニティができている。

◆台東モノづくりのマチづくり協会

モノマチは第四回までは参加企業も倍々で増え、規模の拡大、コンテンツの充実を目指してきた。16社から始まったモノマチは第四回で参加２００社を超え、来場者数は10万人を記録。

しかし規模が大きくなるにつれ、地元の有志によるボランティアで行っていた運営面の負担は増大。第五回を前に「台東モノづくりのマチづくり協会」を設立し、組織化することで運営事務をある程度フォーマット化して省力化することを目指した。その上で年間を通した地域のＰＲ活動ができるような体制を整えつつある。

◆今後のモノマチへの期待

モノマチ協会の吉田会長は「コンテンツは回を重ねるごとにかなりおもしろくなってきている。地域の中で品種、業種、年齢性別を越えたコミュニケーションが生まれ新しいアイデアが出てくることが今後も増えるだろう」と自信を見せている。

ファッションや生活雑貨に関連した企業やショップが多く集まる。長い歴史をもつ企業や伝統の技術を守る職人が担う小規模な工房も点在する一方で、デザビレの卒業生など若手クリエイターのアトリエショップも多い。それらが呼び水となり、2011年頃からはカフェや文具店など感度の高い店舗が増えた。メディアでもおしゃれな街として特集が組まれるなど、注目度の高い地域だ。

ラモーダヨシダ【 財布・革小物 】

革小物・財布専業メーカー。OEM生産を手がける傍ら、1978年にプライベートブランドmicを立ち上げ。第三回モノマチに合わせて本社地下にオープンした上野店には工房も併設し、財布づくりのいろはが学べるスペースとなっている。

田中箔押所【 箔押し 】

ブランド、会社ロゴ、記念品、個人の品物などに加工することで品物の価値を高める「箔押し」。熟練の職人が常にチャレンジを続ける工房。完成品に加工することも得意。台東モノマチでは来場者に特に人気の高い工房のひとつ。

一心堂嶋野【 アクセサリー 】

スワロフスキー・エレメンツの推奨問屋として常時6000アイテム以上を在庫する。アメリカやヨーロッパ各地の老舗工場から真鍮製型打パーツやアクリルパーツ等を輸入し製造業者への販売も行う。パーツの小売も実施している。

m＋（エムピウ）【 革鞄・革小物アトリエ＆ショップ 】

台東デザイナーズビレッジの第一期卒業生である村上雄一郎氏のアトリエ＆ショップ。鞄、財布、雑貨などシンプルかつ機能的なデザインの革製品を取り揃えている。台東モノマチのeastエリアにおけるリーダー的存在でもある。