エーラウンドについて

◆浅草は靴・革の街である

東京を代表する観光地のひとつ、浅草。訪れる外国人旅行者も多く、通年大きな賑わいを見せている。しかし、実はここが皮革産業発祥の地であり、約140年の歴史をもつ“モノづくりの街”であることは、一般にあまり認識されていない。1871年、軍靴製造工場が建設されて以降成長を続け、いまでは革靴の生産量、産業集積地として日本一。近年では靴やファッションの専門学校ができ、若手デザイナーがアトリエを構えるなど、次世代を担うクリエイターの拠点となりつつある。A-ROUND(エーラウンド)は、そんな“モノづくりの街=浅草”を幅広く伝えていこうと、2013年3月に東京皮革青年会のメンバーを中心に発足。名称には“ASAKUSA(浅草)”、“ARTISAN(職人/仏語)”、“AROUND(浅草の街をぐるっとまわって楽しんでほしい)”という意味が込められている。

 

◆短い準備期間で成功できた理由

第1回目の開催は2013年5月。マーケットや靴・鞄などの展示、町工場・アトリエの公開、ワークショップなどを行った。参加企業団体は約150組、メディアでの露出は約40媒体に及んだという。発足からわずか2ヵ月半ほどで、なぜここまで準備を整えることができたのか。エーラウンドの発起人のひとり、運営委員長の今村ひろゆきさんは言う。

「ネーミングやロゴデザイン、企業団体への声かけなども含め、全てを急ピッチで進めなければなりませんでした。そこで活用したのがフェイスブックです。打ち合わせの議事録や渉外資料をアップし、透明性の高い状態を保ちながら情報を一ヵ所に集積。会えない時はフェイスブック上でミーティングを重ねました。広報の一貫としても利用しましたね。」

来場者数は2万人にのぼり、大成功のうちに幕を下ろした。観光名所や美味しいと評判の店が多いエリアの特性や、靴産業が発達している強みをいかした結果である。同年9月には日本橋三越本店でのイベント、11月にはスピンオフ企画「小さい秋8(A)ラウンド」を浅草ものづくり工房と産業研修センターで開催。このような活発な活動の背景には、第1回目で密な地域コミュニティが形成されたことも重要なポイントとなっている。

◆地域コミュニティの重要性

「ずっと浅草で商売をされている方が『今の浅草が一番面白い』って言ってくださるんですよ。エーラウンドという共通の目的に向かって進んでいくというのはとても大きかった。同じ業界であっても顔見知り程度だった方々が仲良くなったり、コミュニティが生まれたことで新たな繋がりもできて。『仲間が増えた』と喜ぶ参加者が多いですね」

中間報告会などでエーラウンドの盛り上がりを示すことも大切だと今村さんは話す。多くの人がエーラウンドに熱意を注いでいることを感じてもらうことで、その熱意が伝達されていく。さらに人と人との輪が広がっていくことで「浅夜市夜」のような派生イベントも、どんどん増えていくのだろう。

 

◆エンターテインメント性を強く

2014年10月に開催されたエーラウンドでは、著名人を招いたセレモニーや人気アーティストによるミュージックフェスを行うなど、よりエンターテインメント性の強いものとなった。目指すアプローチが多いほど、来場者は増える。「最初の入口が“モノづくり”でなくとも、帰るころに『こういうイベントなんだ』と分かってもらえたらいい。幅広い層の方々に、浅草がモノづくりの街であるということを知ってもらいたいですね」

代表的な企業のご紹介

皮革産業の街として日本の革製品づくりを支えてきた地域ということもあり、卸、製造、販売など、革に関連する企業やショップが数多く存在している。浅草をまわれば、材料が買え、加工ができ、一足の靴ができてしまう。そんな街は世界中どこを探しても見当たらないのだとか。その他にもアクセサリー店や飲食店なども参加。味に定評があり全国的に有名な飲食店が多いのも、このエリアならではの特徴だ。

レンド【 シューズクリエイター 】

吉見哲平氏が主宰するシューズブランドで、2013年より活動スタート。企画から型紙・木型の製作も自らが手掛け、生産は熟練した技をもつ浅草の工場が行う。工場へ何度も通いハイクオリティな靴を実現。アトリエにはショップも併設。 

スピングルムーブ【 靴 】

1933年の設立以来、培ってきたゴムの技術をベースとしたニチマンのレザースニーカーブランド。厳選された革を用い、職人の手で一足ずつつくられる。日本人の足型を研究し、究極の履き心地を追求。経年により増す味わいは、レザーならでは。

富田興業【 革製品企画・製造 】

1923年創業の皮革卸売問屋の老舗。一流百貨店や有名婦人靴メーカー、気鋭デザイナーが手掛ける作品にも使用されるなど、革の質の評価は高い。時代のニーズに合う皮革の開発も行うなど、皮革産業に新たな活路を見出している。

富田興業【 革製品企画・製造 】

1923年創業の皮革卸売問屋の老舗。一流百貨店や有名婦人靴メーカー、気鋭デザイナーが手掛ける作品にも使用されるなど、革の質の評価は高い。時代のニーズに合う皮革の開発も行うなど、皮革産業に新たな活路を見出している。